緑/グリーンに「嫉妬」という意味があるのは、なぜ?

カラーセラピストの勉強をすると、必ず色の意味(キーワード)を覚えます。

色の意味を伝えていると、生徒さんからよく聞かれる質問があります。

グリーンに「嫉妬」の意味があるのは、なぜですか?」

例えば、グリーンの色の意味には「自然、癒し、植物」など、色からの想像がたやすいキーワードもあれば、「嫉妬」のように、想像しても分からないキーワードもあります。

なぜ、グリーンが「嫉妬」の意味を持つようになったのでしょうか?

カラーの先生でも、意外と知らないルーツをお伝えします。

    

「Green eyed」はシェイクスピアの新造語

英語圏の慣用句で、「嫉妬深い」ことを「Green eyed monster」と言います。

日本語に訳すと、「嫉妬の目をした怪物」となります。

現代のイギリスの口語では「嫉妬深い」ことを「Green eyed」と言います。

初めてこの言葉を使ったのはシェイクスピアで、『ベニスの商人」と『オセロ』で用いられており、「Green eyed」はシェイクスピアの新造語と言えます。

   

Por. How all the other passions fleet to air,
As doubtful thoughts, and rash-embrace’d despair,
And shudd’ring fear, and green-eyed jealousy!
(The Merchant of Venice, Ⅲ. ⅱ. 107-11, The Riverside Shakespeare)

ポーシア:ああ,他の感情はみんな飛び去ってゆく­――
気がかりだった心配も,あわてて持っていた絶望も,
身をふるわすような不安も,緑の目をした嫉妬も

Iago. O, beware, my lord, of jealousy!
It is the green-ey’d monster which doth mock
The meat it feeds on.
(Othello, Ⅲ. ⅲ. 165-68, The Riverside Shakespeare)

イアーゴー:閣下,嫉妬は恐ろしゅうございますよ。
こいつはいやな色の目をした怪物で,人の心を食い物にして,
しかも食う前にさんざん楽しむというやつです。

    

このようにシェイクスピアは、嫉妬や妬みを緑色のイメージを用いて表しました。

それではなぜ、シェイクスピアは「嫉妬」を「Green eyed」と表現したのでしょうか?

     

「Green eyed」の由来は、猫の目

     

「Green eyed」について調べると、興味深い本がありました。

    

green-eyed は猫の目に由来するもので,昔は青ざめた顔色(greenish complexion)は「嫉妬」の現われと考えられた。シェイクスピアには green-eyed jealousy (Merch. V. Ⅲ. ⅱ.)
という使い方もある。

遠藤敏雄『英文学に現れた色彩』

       

シェイクスピアが「Green eyed」を「嫉妬」と用いる以前から、西洋で"green"は"pale (青白い)"などと同様に、顔色が悪い状態を表すのに用いられていたとされています。

古代ギリシア人は人が病気または嫉妬心を抱くとき、身体から過剰の胆汁が出ることによって顔色が悪くなると信じられていました。

「嫉妬する→胆汁がでる→顔色が悪くなる」という連想から、「グリーン=嫉妬」いうことになったようですね。

     

日本でもはるか昔は、緑も青も「あお」という表現で一緒にされていました。

青野菜や青信号など、その名残を感じさせる言葉も残っていますね。

「みどり」という言葉が出てきたのは平安時代からで、本来は「みずみずしさ」を表す言葉だったようです。

それが転じて新芽の色を表すようになったと言われています。

      

「Green eyed」を辞書で調べてみる

とはいえ日本人の私には、グリーンに「嫉妬」が結びつく意味が、カラーセラピストになったばかりの頃はよく分からなかったのです。

そこで、辞書の出番!高校時代から使っている物持ち良すぎる英和辞書で調べてみました。

そしたら・・・やっぱり、ありましたよ!!

   

【green eyed】
1 緑色の目をした
2 嫉妬深い

(ジーニアス英和大辞典)

     

辞書に載っているくらいですから、これは胸を張って色の意味として採用できるでしょう!

なぜ「Green eyed」が「嫉妬深い」になるのかは言及していませんが、辞書なのでそこまで書くスペースもないし必要もないということでしょうか。

      

「グリーンを選んだ人=嫉妬深い」とは限らない

とはいえ、グリーンを選んだ人がみんな嫉妬深い!というわけではありません。

(お願いだから、決めつけないで・・・)

グリーンには「嫉妬」以外にも、たくさんの意味があります。

カラーセラピストはグリーンの色の意味を用いつつ、傾聴しながら相手が自ら気づき変化するお手伝いをするのです。

カラーセラピーは、投影法を利用したカウンセリングと、色彩の効果を用いたヒーリング法を提案するものです。

もしもグリーンを選んだ人が「嫉妬」という言葉に思い当たる節があったとして・・・嫉妬は悪いものなのでしょうか?

「あぁ、自分は嫉妬しているんだな。」と自覚して、その先の行動や変化につなげることが大事なのだと思うのです。

自分と向き合うためにカラーセラピーはぴったりのツールですが、もちろんほかのツールでも大丈夫!

情報過多の今の時代、自分の外側からの情報にいっぱいいっぱいになりがちですが、自分と向き合う時間も大切にしてほしいなと思います。